【ベトナム視察】「日本らしさ」を前面に出す店から、客が消えていた

2026年7月16日から20日にかけて、ベトナム・ホーチミン市を訪問し、現地の日本食レストランを視察しました。10年ぶりの再訪です。
訪問の目的
私は日本食レストランのベトナム進出について研究を続けており、今回は、10年前と比べて現地がどう変わったかを確かめるために足を運びました。
海外進出は、国内市場の縮小に直面する中小企業にとって選択肢の一つです。ただし、進め方を誤れば投資を回収できないまま撤退することになります。
現地で見てきたこと
まず驚いたのは、客の入りでした。10年前と比べて、明らかに少ない。
空席が目立つ店には共通点がありました。赤い提灯、「いらっしゃいませ」の暖簾、造花の紅葉、店頭に置かれた浴衣のトルソー、壁を埋め尽くす掲示物。「これが日本です」という記号を、高い密度で並べているという点です。
10年前なら、これで良かったのだと思います。競合が少なければ、分かりやすい記号は最短距離で客を連れてきます。
しかしこの10年で、現地の日本食レストランはおよそ2倍に増えました。 同時に、現地の方々の所得も、情報を集める力も上がっています。


新奇性は、なぜ満足度を下げるのか
私の研究では、新奇性(物珍しさ)を強く押し出すほど顧客満足度は下がるという結果をアンケートによる重回帰分析から得ました。
理由は単純です。物珍しさは一度で消費されます。二度目の来店では、もう珍しくない。そのとき評価されるのは、味と接客と居心地だけです。
しかも装飾を強めるほど、先に期待値が上がります。料理や接客がそこに届かなければ、その落差がそのまま不満足になります。
対照的だったのがPIZZA 4P'Sでした。日本人が創業し、現地で広く支持されている店です。視察時、席は埋まっていました。照明を抑えた空間に、日本を思わせる装飾はありません。それでいて接客の丁寧さは、日本国内の店と変わりませんでした。
無印良品も同じ構造でした。籠に積まれていたのは「抹茶チョコがけイチゴ」。日本らしさが内装の演出ではなく、商品の中身に入っています。


此れからベトナム進出を目指す中小企業の皆様へのアドバイス
- 「らしさ」は装飾ではなく中身で出す。 内装への投資は初回来店にしか効きません。同じ予算を商品やサービスの質に振り向けられないか、検討してください。
- 装飾は期待値を引き上げる。 演出を強めるほど、越えるべき水準も上がります。自社の実力と釣り合っているかを確認してください。
- 初回来店率ではなく再来店率で評価する。 新奇性の効果は再来店率には表れません。評価指標を取り違えると、効かない施策を続けることになります。
これは飲食業に限った話ではありません。「日本製だから」「日本式だから」で選ばれる段階は、多くの市場で終わりつつあります。
最後に
弊社では、中小企業の海外展開に関するご相談を承っています。市場調査、進出方針の検討、現地での差別化設計など、お気軽にご相談ください。


