消費者金融で借入中でも事業資金は借りられる?総量規制の正しい理解と注意点

「個人で消費者ローンを年収の3分の1まで借りているので、もう事業資金なんて借りられませんよね?」
創業や副業の相談を受けていると、こうした声を聞くことが少なくありません。
確かに、テレビCMやネット広告では「年収の3分の1までしか借りられない」という言葉が印象的に使われています。
そのため、「借入がある=もう融資は無理」と思い込んでしまう人が多いのです。
しかし、実際にはこれは大きな誤解。
なぜなら、「総量規制」というルールは個人の消費目的の借入に適用されるものであり、事業のための資金調達には当てはまらないからです。
「総量規制」とは?―個人消費を守るためのルール
まずは「総量規制」という言葉の正体を整理しておきましょう。
総量規制とは、貸金業法に基づき「個人の借入総額が原則として年収の3分の1を超えてはいけない」と定めたルールのことです。
これは、多重債務によって生活が破綻してしまう人を防ぐために設けられた制度で、主に消費者金融・クレジットカード会社など「貸金業者」が対象です。
例えば、年収300万円の方であれば、消費者金融などから借りられる金額の上限は合計で100万円程度。
これを超える借入はできないように制限されています。
「事業資金」は総量規制の対象外
一方で、事業を行うための資金(開業費、設備投資、運転資金など)は、この「総量規制」の対象外です。
なぜなら、事業性資金は個人の消費ではなく、事業の運営・発展のために使われるものだからです。
つまり、あなたが個人として消費者金融からお金を借りていたとしても、
それが「生活費」や「趣味」のための借入である限り、事業融資の可否とは直接関係しません。
実際、日本政策金融公庫や信用金庫、地方銀行などの事業性融資は、貸金業法ではなく銀行法など別の法律に基づいて行われており、総量規制の影響を受けません。
とはいえ、「借入があること」自体は見られる
ただし、ここで誤解してはいけないのは、
「総量規制の対象外=借入があっても気にしなくてよい」ではない、という点です。
金融機関は、融資審査の際に個人の信用情報(CIC・JICCなど)を確認します。
そこには、あなたの借入残高・返済履歴・延滞記録などが記載されています。
もし次のような状態が見られた場合、審査は厳しくなる可能性が高いです。
- 消費者金融やカードローンで返済が遅れている
- 借入額が多く、毎月の返済で生活費が圧迫されている
- キャッシングを事業資金に充てている(用途違反)
これらは「資金管理能力に課題がある」と判断されるため、たとえ事業性融資であってもマイナス評価になります。
審査で見られるのは「数字」だけではない
実は、融資審査で重要なのは「借入額の多寡」ではなく、お金の使い方・返し方・考え方です。
私が金融機関で事業資金の融資を担当していたときにも、
「消費者金融からの借入がある=融資NG」とは判断していませんでした。
大切なのは、
- 借入の理由(何のために借りたのか)
- 返済計画(どうやって返しているのか)
- 今後の資金繰り(事業の収支に無理がないか)を、数字とストーリーで説明できるかどうか
です。
たとえば、「過去に生活費の補填で一時的に借りたが、現在は毎月きちんと返済しており、延滞もない」といった状況であれば、十分に理解されます。
消費者金融の返済が「事業資金の圧迫」になっている場合は要注意
一方で、返済負担が重くなり、事業の資金繰りに影響している場合は要注意です。
例えば、
- 月々の返済額が10万円を超えており、売上が安定しない
- 借入返済のために新たな借入を繰り返している
- クレジットの支払いに事業口座の資金を使っている
このような状況では、金融機関は「返済余力がない」と判断します。
事業性融資では「返済原資=事業の利益」が基本です。
その利益を圧迫するような個人借入があると、事業の持続性そのものに疑問を持たれてしまうのです。
融資を受けるために、今できる準備
では、どうすればよいのでしょうか?
以下の3つのポイントを意識して整理してみてください。
① 借入状況を正確に把握する
まずは、現在の借入額・返済額・残期間を一覧化します。
「借入先ごとに、毎月いくら払っているのか」を明確にするだけでも、全体像が見えます。
② 家計と事業を分ける
事業の資金繰りを正しく管理するためには、個人の生活費と事業経費を分けることが不可欠です。
同じ口座でやりくりしていると、どこにお金が消えているか分からなくなり、資金計画が立てづらくなります。
③ 専門家に相談する
自分では整理しきれない場合は、金融機関出身の専門家や中小企業診断士に相談するのが近道です。
第三者の視点から「融資に通るための準備」を具体的にアドバイスしてもらえます。
まとめ:正しい知識と準備で、融資の可能性は広がる
- 総量規制は「個人の消費」に関する借入制限であり、事業資金は対象外
- ただし、返済状況が悪いと事業融資の審査は厳しくなる
- 借入の整理・資金繰りの見える化・専門家への相談が、融資成功のカギ
事業を始めたい方の中には、「借入があるから無理」と自分で可能性を閉ざしてしまう人が少なくありません。
でも実際は、正しく整理し、計画を立てれば道は開けるのです。
元・融資担当があなたの状況に合わせてアドバイスします
当社は、日本政策金融公庫で20年以上、創業・中小企業の融資審査を担当してきた中小企業診断士が、
「借入があるけど融資は可能か?」
「事業計画書をどう書けばいいか?」
そんな悩みを持つ方を数多くサポートしています。
あなたの状況を整理し、どんな説明をすれば金融機関に納得してもらえるか、具体的にアドバイスします。
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は「融資が通らない要件に該当しているから」です。つまり、理由を理解し対策を講じれば、資金調達の成功率は大幅に向上します。

執筆者 篠原 啓祐
(株)Success arts Consulting 代表取締役。日本政策金融公庫で20年間融資審査を担当。当社設立後は、中小企業診断士として経営コンサルティング・創業支援・資金調達サポートを提供。起業家や創業支援者のためのオンラインサロン「BIZ-LAB.(ビズラボ)」を主宰。

