1人社長の資金繰り管理|通帳と資金繰り表で会社のお金を把握する方法

「売上はあるのに、なぜか会社にお金が残らない」

「税理士から試算表をもらっているけれど、会社の資金繰りがよく分からない」

「今月は支払える。でも3か月後も大丈夫なのだろうか・・・」

1人社長や小規模企業の経営者から、このような相談を受けることがあります。

財務というと、決算書や財務分析をイメージするかもしれません。

もちろん、それらも重要です。

しかし、私が資金繰りの相談を受けたとき、まず確認するのはもっとシンプルです。

「今日、会社にいくらお金がありますか?」

そして、もう一つ。

「3か月後、いくら残したい予定ですか?」

最初の質問は通帳を見れば分かります。

ところが、2つ目の質問に答えられる社長は意外と多くありません。

1人社長の財務管理は、

通帳で「現在」を把握する。
資金繰り表で「未来」を把握する。

ここから始めることが、お金の苦労から解放されるための第一歩になります。


1人社長は会社の財務をどう管理すればいい?

最初から難しい財務分析をする必要はありません。

まず把握したいのは、次の5つです。

① 今日、会社にいくらお金があるか
② 今月、あといくら入金されるか
③ 今月、あといくら支払うのか
④ 月末にいくら残るのか
⑤ 3か月後にいくら残るのか

これが分かるだけでも、会社のお金はかなり見えるようになります。

そして、そのために使うのが通帳と資金繰り表です。


なぜ「売上はあるのにお金がない」のか?

会社の資金繰りを考えるうえで、まず理解してほしいのが、

「利益」と「現金」は違う

ということです。

例えば、今月100万円の売上があったとします。

しかし、その100万円の入金が2か月後なら、今月の支払いには使えません。

一方で、

・給与
・家賃
・仕入代金
・外注費
・社会保険料
・税金
・借入金の返済

などの支払いはやってきます。

そのため、

「売上もある。利益も出ている。それなのに会社のお金が減っている」

ということは普通に起こります。

会社が最終的に行き詰まるのは、赤字になった瞬間ではありません。

支払うお金がなくなったときです。

だからこそ、損益だけではなく「現金」を見る必要があります。


STEP1 まず会社の通帳を見る

私が資金繰りの相談を受けたとき、決算書や試算表だけで判断することはありません。

必ず確認したいのが、実際のお金の動きです。

その一番身近な資料が会社の通帳です。

① 現在の預金残高を確認する

まず、

「今日現在、会社にいくらお金があるのか」

を確認します。

ただし、300万円あるから安心、100万円しかないから危険、と単純には判断しません。

重要なのは、

そのお金で、これから予定されている支払いを賄えるのか

ということです。

例えば預金残高が300万円でも、

給与 50万円
仕入・外注費 100万円
カード支払い 30万円
社会保険料 20万円
借入返済 20万円
消費税 100万円

が近いうちに出ていくなら、実質的な余裕はそれほどありません。

通帳残高と将来の支払いは、必ずセットで見る。

これが資金繰り管理の第一歩です。


② 通帳から「会社のお金の癖」を見つける

次に、過去数か月の入出金を見ます。

すると、会社ごとのお金の流れが見えてきます。

例えば、

「25日から月末に支払いが集中する」

「売上の入金が翌々月なので、売上が増えるほど先に資金が必要になる」

「カード払いが思っていた以上に増えている」

「借入金の返済負担が大きい」

「税金の支払い月に一気に預金が減る」

などです。

私は資金繰り支援をするとき、

現状把握 → 原因分析

という順番を大切にしています。

資金が減っているからといって、すぐに「経費を削りましょう」「融資を受けましょう」と考えるわけではありません。

まず、

なぜお金が減っているのか

を把握します。

原因が違えば、打つべき対策も違うからです。


STEP2 資金繰り表で3か月先を見る

通帳には弱点があります。

過去と現在しか分からないことです。

今日300万円あることは分かります。

しかし、

「3か月後にも300万円あるのか?」

は通帳だけでは分かりません。

そこで使うのが資金繰り表です。

難しく考える必要はありません。

基本的な考え方は、

月初にあるお金
+ 入ってくるお金
- 出ていくお金
= 月末に残るお金

です。

例えば、

8月9月10月
月初残高300万円250万円170万円
入金予定200万円180万円250万円
支払予定250万円260万円220万円
月末残高250万円170万円200万円

現在の通帳だけを見れば、

「300万円あるから大丈夫」

と思うかもしれません。

ところが資金繰り表を作ると、

9月末には170万円まで減る

ことが分かります。

すると次の質問ができます。

「なぜ9月にお金が減るのか?」

ここから経営分析が始まります。


資金繰り表は何か月先まで作ればいい?

1人社長であれば、まずは3か月先まで作ることをおすすめします。

最初から12か月分を完璧に作ろうとすると、続かなくなることがあるからです。

まず3か月。

慣れてきたら6か月。

さらに経営計画や設備投資などと連動させるなら12か月。

このように伸ばしていけば十分です。

重要なのは表の完成度ではなく、

資金不足になる可能性を早く発見すること

です。


資金繰り表は「未来を当てる表」ではない

「3か月後の売上なんて分からないから、資金繰り表を作っても意味がない」

と思う方もいるかもしれません。

確かに未来を正確に予測することはできません。

しかし、それで構いません。

資金繰り表の目的は、

未来を当てることではなく、未来に備えること

だからです。

例えば資金繰り表を作った結果、

「このままだと3か月後に預金が50万円まで減りそうだ」

と分かったとします。

3か月前に分かれば、

・売掛金の回収を早める
・支払条件を見直す
・不要不急の支出を延期する
・設備投資の時期をずらす
・仕入や在庫を見直す
・金融機関へ融資を相談する
・売上確保の施策を打つ

など、いくつもの選択肢があります。

しかし、通帳残高が50万円になってから気づいたら、選択肢はかなり少なくなります。

資金繰り管理の価値は、「早く気づけること」にあります。


売上が伸びている会社ほど資金繰りに注意する

「売上が伸びているから資金繰りも大丈夫」

とは限りません。

例えば、

仕入・外注費を先に支払う

商品・サービスを提供する

請求する

1〜2か月後に入金される

というビジネスでは、売上が急増すると、入金より先に支払いが増えます。

すると、

忙しい。
売上も増えている。
利益も出ている。
でも、お金がない。

という状態が起こります。

新店舗の出店や設備投資、新規事業への投資でも同じです。

売上予測だけを見るのではなく、

いつお金を払い、いつ売上が発生し、いつ現金が入ってくるのか

まで見る必要があります。


融資を受ける前にも資金繰り表を作る

資金不足が予測されれば、融資は有力な選択肢です。

しかし、

「いくら借りられるか」だけで考えるのは危険です。

500万円を借りれば、その瞬間は預金が500万円増えます。

しかし、その後は毎月返済が始まります。

そのため、

いくら必要なのか

いくら借りるのか

毎月いくら返済するのか

返済後も資金繰りが回るのか

まで考える必要があります。

資金調達と資金繰りは、別々の問題ではありません。

セットで考えるものです。


資金繰り表を作って終わりではない

私が資金繰り支援で最も大切にしているのは、ここです。

資金繰り表を作成すること自体が目的ではありません。

資金繰りを見ながら、

① 現状把握

② 原因分析

③ 将来予測

④ 対策を考える

⑤ 実行する

⑥ 翌月、結果を確認する

というサイクルを回すことが重要です。

例えば3か月後に資金不足が予測されたとしても、

売上不足なのか。

粗利益が低いのか。

売掛金の回収が遅いのか。

支払いが集中しているのか。

投資負担が大きいのか。

借入返済が重いのか。

原因によって対策は違います。

だから私は、資金繰り表を単なるExcelの表ではなく、

「社長が次の一手を決めるための経営ツール」

だと考えています。


でも、1人で毎月続けるのは意外と難しい

ここまで読んで、

「それなら自分でも資金繰り表を作ってみよう」

と思った方もいるでしょう。

ぜひ、やってみてください。

ただ、実際に経営者の方と接していると、別の問題が出てきます。

最初の1回は作れても、毎月更新するのが難しい。

1人社長は、

営業、現場、顧客対応、経理、採用、経営判断など、ほとんどを自分で抱えています。

忙しくなると、資金繰り表の更新はどうしても後回しになります。

そして気づけば、

「最後に更新したのは3か月前」

ということもあります。

もう一つ難しいのが、

数字は出せても、その数字から何を判断すればいいのか分からない

という問題です。

そこで私は、資金繰り表を作って渡すだけではなく、経営者と一緒に毎月の資金繰りを確認する伴走支援を行っています。


毎月、一緒に資金繰りを作る伴走支援

当社の資金繰り支援では、経営者に資金繰り表を渡して、

「来月から自分で更新してください」

で終わりにはしません。

毎月、実際の通帳残高や入出金を確認しながら、

「先月の予測と実績はどうだったか」
「今月はいくら入ってくるか」
「今月はいくら出ていくか」
「3か月先の残高はいくらになるか」
「資金が大きく減る月はないか」

を一緒に確認します。

そして重要なのは、その先です。

例えば、

「3か月後に資金が大きく減りそうですね」

で終わるのではなく、

「では、今月何をするか?」

まで一緒に考えます。


資金繰りを見ながら「次の一手」を一緒に考える

毎月の確認では、必要に応じて、

・売上や入金予定の確認
・固定費、変動費の確認
・大きな支払い予定の確認
・税金、社会保険料の支払い確認
・設備投資や出店計画の検討
・借入返済状況の確認
・資金不足時の改善策検討
・金融機関への融資相談のタイミング
・借入金額や返済計画の検討

なども行います。

つまり、

資金繰り表を作る支援というより、資金繰りを使って経営を一緒に考える支援

です。

毎月数字を見ることで、

「思ったより売上が入っていない」

「この経費が増えている」

「このままなら3か月後に厳しくなる」

「逆に、この水準なら設備投資しても大丈夫そうだ」

といったことにも早く気づけます。


当社が目指しているのは「社長が自分で数字を見られる状態」

ずっと専門家に数字を見てもらわなければ経営判断ができない状態をつくりたいわけではありません。

むしろ逆です。

毎月一緒に資金繰りを見ることで、

社長自身が会社のお金の流れを理解できるようになること

を目指しています。

最初は、

「この数字は何ですか?」

でも構いません。

毎月一緒に見ていると、

「来月は消費税があるから、ここまで使わない方がいいですね」

「この入金が1か月遅れると資金が厳しくなりますね」

「この投資をするなら、先に融資を相談した方がいいですね」

と、社長自身が考えられるようになってきます。

これは単なる経理知識ではありません。

経営者としての財務感覚を身につけることだと私は考えています。


税理士に任せていても、社長は資金繰りを見る

「数字は税理士に任せています」

という経営者も多いと思います。

もちろん、会計処理や税務申告は税理士の専門領域です。

一方で、

今、会社にいくらあるのか。
3か月後にいくら残るのか。
新しい投資をして大丈夫なのか。
いつ銀行に相談するべきなのか。

を判断するのは経営者です。

これは「経理」ではなく、経営だからです。

特に1人社長の場合、社内に経理部長や財務部長がいないケースも多いでしょう。

だからこそ私は、社長の横で一緒に数字を見ながら、財務面から経営判断を支える役割が必要だと考えています。


こんな1人社長の方は、一度資金繰りを整理してみてください

例えば、

・売上はあるのにお金が残らない
・通帳残高を見ながら経営している
・税理士から試算表はもらっているが活用できていない
・資金繰り表を作ったことがない
・資金繰り表を作ったが更新できていない
・数か月先の預金残高が分からない
・融資を受けるべきタイミングが分からない
・出店や設備投資をして大丈夫か判断できない
・経営数字について相談できる相手がいない

という場合です。

最初から高度な財務分析をする必要はありません。

まず、

「今いくらあるのか」
「3か月後にいくら残るのか」

を一緒に見えるようにするところから始めます。


通帳は「現在地」、資金繰り表は「ナビ」

私は、

通帳=会社の現在地

だと考えています。

一方、

資金繰り表=これから先を見るナビ

です。

現在地だけ分かっても、この先どこへ向かうのかが分からなければ経営判断はできません。

このまま進んで大丈夫なのか。

途中で資金が足りなくならないか。

新しい投資をしても大丈夫なのか。

融資という「給油」が必要なのか。

それを考えるのが資金繰り管理です。

そして、本当に大切なのは資金繰り表そのものではありません。

資金繰り表を見ながら、社長が次に何をするのかを決めること。

だから当社は、資金繰り表を作って納品して終わりではなく、

毎月一緒に数字を確認し、一緒に資金繰りを作り、必要な対策を考える。

そんな伴走型の資金繰り支援を行っています。

資金繰りは、会社が危なくなってから見るものではありません。

会社を守るためにも、次の投資や成長のタイミングを判断するためにも、

まだ余裕があるときから見る。

それが大切です。

まずは、

「今日、会社にいくらある?」
「3か月後、いくら残っている?」

この2つから確認してみてください。

この記事を書いた人
株式会社Success arts Consulting 代表取締役 篠原啓祐
中小企業診断士。日本政策金融公庫に20年間勤務し、創業・中小企業融資、資金繰り支援等に従事。現在は1人社長・中小企業を中心に、資金繰り、資金調達、経営改善を支援。